NHKラジオ講座9月号の「中国語発音道場」はgood!
9月に入ってしまった。
NHKラジオ中国語講座も、来週月曜(9月6日)からの1か月でいよいよ遠藤先生の入門編も完
結。
で、9月号のテキストを眺め渡してみたところ、最終週(27日~30日)に特別編として「中国語発
音道場」というのが付いているのだが、これが実にgoodな内容なので感心した。
というか、「入門編」でここまで本格的=上級編的な発音のポイントに触れてしまおうというのは
たいしたものだなぁと、いかにも音韻学ご専門(つまり発音マニア!?)の遠藤さんらしくて、微笑ま
しくも恐れ入ると同時に、いや、入門期の発音の手ほどき、まさにかくあるべしと、心強くも感じら
れた。
遠藤さんご本人も、巻頭のあいさつ(p.6)のところで、「かなり難しい内容を含みますが、チャレ
ンジしてみてください」とお書きになっているが、実際、相当高度というか、「達人」級の発音ポイ
ントが触れられている。
例えば、27日の「3.[v]の発音」(テキストp.43)は、まぁそこまで教えなくてもいいんじゃないの?
という感じ。(^^;)
だが、逆に、こういうことはちゃんと頭で理解し、身体でも身につけないと、実はホンモノの中国語
らしい発音にならないんだよねぇという、大切なポイントも数多い。
その筆頭は、例えば27日の「2.2. 無気音は声門閉鎖音を伴う」だろう。
「声門閉鎖」がちゃんとできてるかどうかは、中国語の発音全体の巧拙を決定づける重要な要素
だと思う。
また、27日の「4.eの発音」、「5.oの発音」も、母音の発音のプロセスで、「出だし」から「末尾」
へと音が微妙に変化する、つまり口と唇の開け具合や舌の位置はずっと固定されているのでは
なく、しだいに「狭→やや広め」へと動かすのが、ホンモノらしい発音にするコツであることなど、
あらためて説明されると「目からウロコ」という人は意外に少なくないのではないかと思う。
(わたしは実は大学での中国語の授業中に、この点もちゃんと説明して、意識的=自覚的に練
習させるようにしています)
それから、27日の「11.iongの発音」とか「13.üanの発音」の説明なども、内心疑問に感じて
いた人は、こうした説明を聞いて、「なーんだ、やっぱりそうだったのか!」と腑に落ち、長い間の
疑問が氷解してメデタシメデタシとなるに違いない。
とまぁ、大事なポイントを取り上げており、実に有益なのだが、この「発音道場」の素晴らしいとこ
ろは、何と言ってもやはり後半の2回、29日放送の「2音節以上の組み合わせ」と、30日放送の
「文レベルの強さアクセント」であろう。
というのは、ふつう中国語の教科書や参考書では、ひとつひとつの母音(韻母)や子音(声母)、
あるいは声調の発音の仕方については説明してあっても、2音節以上の音が組み合わさったと
きの発音のポイント、特に「強さアクセント」にまで触れているものはほとんどないからだ。
にもかかわらず、実際には、中国語は「声調」をマスターすれば中国語らしい発音になるもので
はなく、また、強弱の問題についても、単にいわゆる「軽声」の問題だけにとどまらない、強さア
クセントに関わるポイントというものが厳然とあるのであって、できるだけネイティブに近い、本格
派の中国語発音を身につけたいと思う者は、そのあたり、ゆるがせにしてはならない点がいくつ
かある。
さらに、複数の音節(=単語)の組み合わせといったレベルだけでなく、そのもう一段階上のレベ
ルとして、文レベルの強さアクセント、あるいはリズム(具体的には例えばポーズの置き方など)
の問題にも注意を払って、メリハリのきいた発音を心がける必要があるわけだが、今回の「発音
道場」は、まさにかゆいところに手が届く内容になっている。
実は、遠藤さんはかつて『月刊中国語』(内山書店発行、現在は残念ながら休刊中)2002年10
月号から6回にわたって「発音6講」という連載を担当されたことがあり、また、同誌1998年8月
号掲載の「中国語のエッセンス」(第5回)で文アクセントについて詳しく解説しておられ、わたし
も大いに参考にさせていただいた。(っていうか、目からウロコ、落ちまくりでしたです、はい)
今回の「発音道場」はそのエッセンスをラジオ講座入門編向けに再構成したものと拝見したが、
繰り返しになるが、これは入門編のレベルを超えている部分がかなりあると同時に、逆に、入門
期・揺籃期にこそ、妙に手加減、手抜きしたりしない、ホンモノの中国語を身につけるための本
格的な手ほどきがあってよいとも思うわたしは、こんどの「発音道場」にはまさに拍手喝采だ。
うちの学生たちにも、今月末は(いままで聴いていなかった人も)ぜひラジオ講座を聴くように!
と勧めたいところだが、大学の2学期は10月1日からで、このときはまだ夏休み中。
学生と顔を合わせ檄を飛ばすチャンスは事実上ないに等しいのであった……。(泣)
うーん、悔しい~!
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