2004.09.01

NHKラジオ講座9月号の「中国語発音道場」はgood!

9月に入ってしまった。
NHKラジオ中国語講座も、来週月曜(9月6日)からの1か月でいよいよ遠藤先生の入門編も完
結。
で、9月号のテキストを眺め渡してみたところ、最終週(27日~30日)に特別編として「中国語発
音道場」というのが付いているのだが、これが実にgoodな内容なので感心した。
というか、「入門編」でここまで本格的=上級編的な発音のポイントに触れてしまおうというのは
たいしたものだなぁと、いかにも音韻学ご専門(つまり発音マニア!?)の遠藤さんらしくて、微笑ま
しくも恐れ入ると同時に、いや、入門期の発音の手ほどき、まさにかくあるべしと、心強くも感じら
れた。

遠藤さんご本人も、巻頭のあいさつ(p.6)のところで、「かなり難しい内容を含みますが、チャレ
ンジしてみてください」とお書きになっているが、実際、相当高度というか、「達人」級の発音ポイ
ントが触れられている。

例えば、27日の「3.[v]の発音」(テキストp.43)は、まぁそこまで教えなくてもいいんじゃないの?
という感じ。(^^;)

だが、逆に、こういうことはちゃんと頭で理解し、身体でも身につけないと、実はホンモノの中国語
らしい発音にならないんだよねぇという、大切なポイントも数多い。
その筆頭は、例えば27日の「2.2. 無気音は声門閉鎖音を伴う」だろう。
「声門閉鎖」がちゃんとできてるかどうかは、中国語の発音全体の巧拙を決定づける重要な要素
だと思う。
また、27日の「4.eの発音」、「5.oの発音」も、母音の発音のプロセスで、「出だし」から「末尾」
へと音が微妙に変化する、つまり口と唇の開け具合や舌の位置はずっと固定されているのでは
なく、しだいに「狭→やや広め」へと動かすのが、ホンモノらしい発音にするコツであることなど、
あらためて説明されると「目からウロコ」という人は意外に少なくないのではないかと思う。
(わたしは実は大学での中国語の授業中に、この点もちゃんと説明して、意識的=自覚的に練
習させるようにしています)

それから、27日の「11.iongの発音」とか「13.üanの発音」の説明なども、内心疑問に感じて
いた人は、こうした説明を聞いて、「なーんだ、やっぱりそうだったのか!」と腑に落ち、長い間の
疑問が氷解してメデタシメデタシとなるに違いない。

とまぁ、大事なポイントを取り上げており、実に有益なのだが、この「発音道場」の素晴らしいとこ
ろは、何と言ってもやはり後半の2回、29日放送の「2音節以上の組み合わせ」と、30日放送の
「文レベルの強さアクセント」であろう。

というのは、ふつう中国語の教科書や参考書では、ひとつひとつの母音(韻母)や子音(声母)、
あるいは声調の発音の仕方については説明してあっても、2音節以上の音が組み合わさったと
きの発音のポイント、特に「強さアクセント」にまで触れているものはほとんどないからだ。
にもかかわらず、実際には、中国語は「声調」をマスターすれば中国語らしい発音になるもので
はなく、また、強弱の問題についても、単にいわゆる「軽声」の問題だけにとどまらない、強さア
クセントに関わるポイントというものが厳然とあるのであって、できるだけネイティブに近い、本格
派の中国語発音を身につけたいと思う者は、そのあたり、ゆるがせにしてはならない点がいくつ
かある。

さらに、複数の音節(=単語)の組み合わせといったレベルだけでなく、そのもう一段階上のレベ
ルとして、文レベルの強さアクセント、あるいはリズム(具体的には例えばポーズの置き方など)
の問題にも注意を払って、メリハリのきいた発音を心がける必要があるわけだが、今回の「発音
道場」は、まさにかゆいところに手が届く内容になっている。

実は、遠藤さんはかつて『月刊中国語』(内山書店発行、現在は残念ながら休刊中)2002年10
月号から6回にわたって「発音6講」という連載を担当されたことがあり、また、同誌1998年8月
号掲載の「中国語のエッセンス」(第5回)で文アクセントについて詳しく解説しておられ、わたし
も大いに参考にさせていただいた。(っていうか、目からウロコ、落ちまくりでしたです、はい)
今回の「発音道場」はそのエッセンスをラジオ講座入門編向けに再構成したものと拝見したが、
繰り返しになるが、これは入門編のレベルを超えている部分がかなりあると同時に、逆に、入門
期・揺籃期にこそ、妙に手加減、手抜きしたりしない、ホンモノの中国語を身につけるための本
格的な手ほどきがあってよいとも思うわたしは、こんどの「発音道場」にはまさに拍手喝采だ。

うちの学生たちにも、今月末は(いままで聴いていなかった人も)ぜひラジオ講座を聴くように!
と勧めたいところだが、大学の2学期は10月1日からで、このときはまだ夏休み中。
学生と顔を合わせ檄を飛ばすチャンスは事実上ないに等しいのであった……。(泣)
うーん、悔しい~!

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2004.08.21

川崎和男氏の学長就任取りやめ

川崎和男氏が札幌市立大学の学長就任予定を取りやめることになったことについて、追加情報
をアップしておきます。

◆北海道新聞(Web版) 2004/08/20
札幌市立大学、川崎氏が学長を辞退 06年開学、教員選考で対立

◆北海道新聞(Web版) 2004/08/21
札幌市立大学長辞退の川崎氏 「整備条件折り合わず」

◆朝日新聞(Web版) 2004/08/21
札幌市立大・学長辞退の川崎氏に聞く 二段構えの教員選考に懸念 街づくりの提案、二の次に

なお、「(仮称)札幌市立大学のホームページ」には、現時点(8月21日午後2時)で、まだ
情報が出ていませんね。

9月1日追記
◆毎日新聞(Web版) 2004/08/21
札幌市立大学長内定辞退、名古屋市立大学・川崎和男氏「なりたかった」

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2004.08.20

ショック! 川崎和男氏、学長辞退とは!

来年4月の開学を目指して準備中の札幌市立大学の学長予定者に、世界的インダストリアル
デザイナーである川崎和男氏が内定していたことは以前このブログでも書いた

だが、今朝の朝日新聞(北海道版27頁)を見て驚いた。
「川崎和男氏、学長辞退」というのだ。(Web版記事は→こちら
ショック!

はじめ顔写真が目に飛び込んできたので、一瞬、訃報かと疑った。
(失礼ながら、心臓に時限爆弾のような持病をかかえる氏の場合、いつでもあり得る話なのだ)
そうでないことはすぐに分かったものの、やはりショックである。

教員人事をめぐる考え方で折り合わなかったということらしいが、いま詳細は不明。
「教授は40~64歳」などの年齢制限が決められたことに対し、川崎氏から年齢にとらわれず柔
軟な採用を」との意見が出されていたとか。
7月31日にメールで学長を辞退したい旨連絡があり、上田市長も自ら説得に名古屋へ飛んだと
のことだが、残念ながら話し合いがつかなかったようだ。

川崎氏の活躍に大いに期待していただけに、ほんとうに残念だ。

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2004.06.05

学生たちからの質問に答える

大学で中国語を教えているが、学生たちからいろいろ質問をもらう。
先週、教科書の「ユニット2」(半期分の教科書で、ぜんぶで4つのユニットで構成されている)まで
終わったところで、まとめの試験を実施したのだが、その答案用紙の最後のところに「担当講師、
TA(ティーチング・アシスタント)にひとこと」という欄を設けていて、わたしや、中国からの留学生で
授業のサポートをしてくれる(いっしょに教室でティーム・ティーチングをしている)アシスタントへの
質問や感想などのコメントを書き込んでもらっている。
で、やっと採点が終わり、その質問にすべてお返事を書いたのだが、これは質問者個人に対して
だけでなくクラスみんなにフィードバックした方がいい質問だなぁ、というようなものがある場合は、
答案用紙にお返事を書くのではなく、このブログとは別に開いているウェブ・サイト(ホームページ)
の方に「中国語学習質問箱」というコーナーを作り、回答をアップしている。

学生からの質問・コメントへの返事はこれまでもずっと書いてきたが、ウェブ上で公開するというのは
今年初めてやっている試みで、公開する以上、内容にも一定の責任をもって回答することになるから
それだけ手間もかかるけれども、いまのところわたし自身楽しみながらやっているし、学生諸君もそ
れなりにおもしろがって読んでくれているようだ。
また、同じクラスをペアで担当している中国語ネイティブの先生方やTAたちが、楽しみに読んでくだ
さっているようで、この話題で教師サイドのコミュニケーションも活性化するという効果もある。

質問は、「最初に中国に入ってきた自動車はアメリカ製だったのでしょうか?」とか、「中国人の姓
で一番多いのはリンですか?」といったものから、「“好吃”(おいしい)と“好奇”(好奇心)とでは
同じ“好”でも声調が違っているのはどういうことですか?」、「同音異義語にはどう対処したらいい
ですか?」といった、中国語学習上かなり大事なポイントを突いた好質問まで、内容もレベルもさま
ざまだが、教室では、あるいは授業後でも、面と向かって質問するのは恥ずかしくても、このような
かたちでワンクッションおくと、わりと気軽に質問できるという人は少なくないだろう。
これがクラスというコミュニティのコミュニケーションの活性化につながればとねらっているのだが、
一朝一夕に効果が出てくるものではないだろうから、もうしばらく続けてみよう。

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2004.06.04

川崎和男氏、札幌市立大の学長に内定

グッドデザイン賞審査委員長もつとめた工業デザイナーの川崎和男氏(現名古屋市大教授。55才)が
2006年春に開学予定の札幌市立大学の初代学長に就任することが内定したらしい。
(『朝日』04年6月4日朝刊による)

胸のときめくような、うれしいニュースである。
札幌市立大学は、デザイン系の市立高専と、市立高等看護学院とを統合して「大学化」する構想が
固まっており、2年後に開学予定。いままさにデザイン段階にあるわけだが、その旗揚げに人を得て、
札幌のアート・デザイン・シーンが、そして医療福祉分野がいっそう活性化していくのではないかと
期待が膨らむ。

川崎氏は、東芝で工業デザイナーとしてガンガン活躍していた時期に、交通事故で車椅子生活に。
それが人生の転機になり、身障者も含めたすべての人にとって優れたデザインとは何かを常に意識し
たデザインへと向かった。
(自分がいざ車椅子を使うようになってみたら、いかにも味気ない画一的なデザインの車椅子しかなく、
それまで医療・福祉分野でデザインというものがほとんど顧みられていなかった当時の現状を痛切に
体験、それで自らの手で「カッコイイ車椅子」をデザインしてしまったという話を、NHKの「トップランナー」
か何かのトーク番組で見たことがある)
その後、人間工学をより専門的に追求すべく医学部に入り直し、医学博士の学位も取得したというの
には敬服せざるを得ない。
わたしたちの〈身体〉と〈デザイン〉--両者をふたつながら追求するユニバーサルデザインへと飛躍し
た川崎氏の「仕事」は、世界の熱い注目を浴びているのである。
(川崎氏の仕事については → こちらもどうぞ

ちなみに、わたしが現在愛用している眼鏡も Kazuo Kawasaki デザインで、川崎氏の出身地である
福井の老舗「増永眼鏡」の製品。
「Anti-tensions」(アンチ・テンションズ)というシリーズのもので、その名のとおり、テンプル(眼鏡の
「つる」)にたわみなどの圧力(テンション)がかかっても、レンズそのものへの歪みを生じさせない仕
組みを作り出している。
つまり、「Anti-tensionフレームはレンズの歪みから生じる眼への医学的負担を皆無にした理想的な
フレームデザイン」(増永眼鏡HPより)というわけだ。
……という医学的・人間工学的側面の徹底追求もさることながら、このメガネ、とにかくおしゃれで、
カッコイイのだ!
それ以前に着用していたメガネ(アイフォリックス)も、機能性・デザイン性に優れた製品で、かなり気
に入っていたのだが、Kazuo Kawasaki 製品は、もう一目見たその瞬間「惚れて」しまった(笑)。
なんというか胸が高鳴るようなデザインで、「ああ、これを身にまといたい!」と、ほとんど恋愛感情と
いうか、本能的(?)に身体の中心に電流が走ったことであった。

学長就任への意向を固めたKazuo Kawasaki。
「これからのデザインと看護の専門職を育てるため、精いっぱい頑張り、札幌モデルをつくっていきた
い」と話しているという。(『朝日』より)

《札幌モデル》

なんだかワクワクするではないか。
川崎氏の活躍に大いに期待したい。

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2004.05.26

盧思さん(TV中国語講座)の声、お待たせ!

NHKテレビ中国語講座にレギュラー出演している盧思さんは、東京芸大の大学院日本画コース
修士課程を修了、京劇の女優でもある才色兼備の北京っ娘で、視聴者の人気も高いらしいが、
ぼくの担当クラスにもファンがいる。
テストの余白に設けた「ひとことコーナー」(授業の感想や質問、日常のつぶやきなど自由に書い
てもらう)に、「盧思さんがかわいい」とか「盧思さんに会いたい!」とか書いてくるのが数名いた。

その盧思さんの声がweb上で聞けるようになった。
NHKテレビ中国語講座ホームページの音声システムが、ようやく工事を終え、今週から使える
ようになったのだ。(もう5月も下旬ですよ。ほんと、お待たせでした)
これはさっそく学生に教えてあげなければ。(^^)

RPまたはWMPで視聴可能だが、ぼくが試した感じでは、RPの方が音質がよい。

ただ、「2004年度の音声は映像のない軽いファイル(音声のみ)に致しました。ご了承下さい。」
とのことで、ちょっと残念。
(かなり残念がっている人も多数いるに違いない)

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2004.05.25

東工大と清華大の修士号がダブルで取れる!

さすがは、東工大!
中国の理科系大学の最高峰で、現政権を支えるニューリーダーを多数輩出している清華大学と提携、
卒業と同時に日中両大学の修士号がダブルで取れる大学院の合同プログラムを
この9月から立ち上げるという。
詳しくは、→こちら

流行のナノテクノロジーとバイオコースの2コースからなり、北京と東京の両方で、教育・研究を行ない、
中国人の学生は日本語による専門科目を、日本人の学生は中国語による専門科目を集中的に学ぶ
という仕組み。
そのため、このような教育を実践するため、北京常駐教員の募集を始めたようだ。

小生はもちろんこの分野とは関係ないので、お話にならないが、日中比較文学なんかで同様のプログラ
ムが作られたら、応募してしまうかも知れない。
清華の中文系主任(学科長)王中忱さんとは専門が近いこともあって比較的親しくおつき合いさせてい
ただいているから(3月には彼の授業にゲスト講師として呼んでいただいた)、企画を持ちかけてみよう
かしらん、などと思わず夢想してしまった。(^^;)

実は、「ダブル修士号」の話は、2001年6月に香港大学日本研究学系の王向華(Dixon Wong)さん
を札幌にお招きしたとき
、彼との間で密かに、できたらいいよねぇと、ちょっとマジに青写真を検討して
みたことがあったのである。
当時、香港では北海道観光ブーム真っ只中だったということもあってか、Dixonはえらく乗り気だったし、
あちらはナンと言っても日本研究専攻なのだから、日本留学は学生にとって絶対魅力的に違いない。
で、問題は、こっちから香港に行く学生がいるか、というのがネックに思われた。

そんなこんなで、けっきょくぼくらの「陰謀」は実現しなかったのだが、東工大と清華大学のコラボには
日中学術交流に関心をもつひとりとして、大いに発展を期待したい。

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